「デンタルビジョン」8月号

「デンタルビジョン」8月号に掲載いたしました。「口腔機能低下症」と「口腔機能発達不全症」の話は、旬のようで、我々も方向性をしっかり決めて、追求すべきかもしれません。こまくて読めないかも知れませんが、こちらにも掲載しました。

原稿:『健康優良児は健康寿命ジジイか?』
健康で長生きするため、平均寿命と健康寿命の乖離を是正するために、口腔機能の維持が大切であることが、注目されてきています。そして我々歯科医療にたずさわる者にとって、口腔機能の発育と維持の支援が重要な時代になってきています。ロコモティブシンドローム(運動器症候群、通称ロコモ)とは、骨や関節、筋肉など運動器の衰えが原因で、日常生活に障害を来たしている状態のことをいい、進行すると要介護や寝たきりになるリスクが高くなります。平均寿命は延びましたが、私たちの運動器は、元々それほど長持ちするようにはできていないようです。いつまでも自立した生活を送るためには、定期的に運動器のメンテナンスを行いながら、大切に使い続ける必要があります。
今回の診療報酬改定では「ライフステージに応じた口腔機能管理の推進」において「口腔機能低下症」という新しい病名が誕生し、オーラルフレイルやロコモに対応できる医療手段(技術)が公的医療保険のもとで利用できることになりました。また、「食べる機能」「話す機能」または「呼吸する機能」が十分に発達していないか、正常に機能獲得ができていない状態で、明らかな摂食機能障害の原因疾患を有さず、口腔機能の定型発育において個人因子あるいは環境因子に専門的な関与が必要な状態に対して「口腔機能発達不全症」という病名が認められることになりました。こうした動きは、口腔機能の発育と維持の支援を目指す我々にとって追い風となるのではないでしょうか。この領域を皆で大切に育てていきたいものです。
この原稿を書き始めている時に日本歯科医学会からこんな企画が舞い込みました!!!
急遽、8/19(日)日本歯科医学会主催医療関係者向け「歯科診療に関する基本的な考え方」に基づくライフステージに応じた口腔機能管理の推進という研修会が九段の歯科医師会館で無料で300人限定で行われるとのこと。この研修会は、「口腔機能発達不全症」と「口腔機能低下症」に関する基本的な考え方と保険治療に必要な書類作成について説明する研修会のようです。国は、なぜに急いで、「口腔機能発達不全症」と「口腔機能低下症」の病名をほぼ同時に保険導入し、保険医療行政を進めようとしているのでしょうか?そこには「口腔機能発達不全症」と「口腔機能低下症」が国が掲げる「健康医療2035」の基本理念の一つである疾病の治癒と生命維持を主目的とする「キュア中心」の時代から、慢性疾患や一定の支障を抱えても生活の質を維持・向上させ、身体的のみならず精神的・社会的な意味を含めた健康を保つことを目指す「ケア中心」の時代への転換の象徴事業の一つだからなのではないでしょうか。全国の医療関係者に広く浸透させなければならない「健康医療2035」の基本理念の徹底を急遽300人限定一回限りで終わらせて欲しくないものです。
それでは、「口腔機能発達不全症」と「口腔機能低下症」に関する基本的な考え方とは何なのでしょうか?
それは、過日(5/27)行われた日本歯科医学会主催医療関係者向け「口腔機能発達不全症の考え方と小児の口腔機能発達評価マニュアルの見方」という研修会当日の資料「加齢による口腔機能の変化のイメージ」[中医協資料2017.5.31](図1)に示されております。
そこには、高齢期に口腔機能を維持して健康寿命を達成するには、成人期の高い口腔機能の維持が必要であり、それを達成するための、乳幼児期・学齢期の高い口腔機能の獲得が必要である。とする論法が法律で示されてあります。
さて乳幼児期・学齢期の高い口腔機能の獲得は、本当に高齢期の口腔機能を維持し健康寿命の達成に寄与するのでしょうか?健康優良児とは、1978年に表彰制度は廃止されましたが、身長・体重が平均以上で、学習成績・運動能力共に優れ、性格明朗な青少年として、1930年から朝日新聞社・文部省・都道府県教育委員会の合同で表彰されました。これら条件を満たす小学校6年生男女1名ずつを、各学校が推薦し、陸上競技場で徒競走などの運動能力テストを課した上、医師による健康診断・教師による面接を経て該当者が確定しました。
健康寿命とは、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間のことですが、平均寿命と健康寿命の間には、男性で約9年、女性で約13年の差があります。
健康寿命ジジイとは、健康寿命のまま平均寿命を全うできる、寝たきりにならない、ネタ切らない老人の事です。(笑)元気でコロリ!治療費入らず!健康保険、介護保険使わず!介護医療財政万々歳!!国家財政の危機に貢献!!これが国の健康戦略なのです!
知り合いにも健康優良児で表彰された方がおりますが、その優れた方々は、健康寿命ジジイになられたのでしょうか?極端に言い換えれば、オリンピック選手は、皆さん健康寿命が長いのでしょうか?十分に検証する意義があるのではないでしょうか。

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